医療のおはなし メディトーク
「血(けつ)の異常」と漢方治療(高知新聞 医療のお話 メディトーク 2016/2/8掲載)
漢方医学の「血」は西洋医学の「血液」と似ていますが、もう少し広い概念を指しています。「血」は血管を巡り、全身に栄養分を与え、体の隅々まで潤す働きがあります。これらの働きにより、各臓器が正常に機能し、爪や髪の毛、肌、筋肉、視覚や聴覚などを生き生きと保つのです。また人間の「こころ」の安定にも深く関係しています。そして特に女性には、月経や妊娠、出産など大きな関わりを持っています。
まず、「血」は飲食物から作られるので、食事が適切に取れなかったときや、消化吸収する臓器に不調があると異常が生じます。「血」の量が不足してしまうと、めまい、眼のかすみや乾き、動悸(どうき)、不整脈、冷え症、月経不順、不妊、皮膚の乾燥、こむら返り、手足のしびれ、不眠などが起こります。
「血」に熱がこもった状態では、発熱、鼻血、口の乾き、便秘、アトピー性皮膚炎や乾癬(かんせん)などの皮膚疾患、月経過多が現れます。脂っこい食事や刺激物の取り過ぎは熱を生じる原因となりますので注意しましょう。
また、冷えや外傷などは「血」に滞りを生じます。「血」が滞った状態では、血管障害、目の下のくま、顔のしみ、肩こり、神経痛、関節痛、便秘、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患、また各種のがんなどが見られます。ちなみに「血」の滞りによる痛みは、針で刺されたような痛みが特徴的で、寝ていても痛みで目が覚めるということがよく見受けられます。
これらの症状にお困りでしたら、漢方治療を考えてもよいでしょう。極端なダイエットや喫煙、アルコールの飲み過ぎ、運動不足は「血」の不調の原因になります。バランスの取れた食事や適度な運動で「血」を巡らし、生き生きと元気に生活しましょう。