医療のおはなし メディトーク

こころの安定が大切 ‾漢方医学の視点から‾(高知新聞 医療のお話 メディトーク 2015/6/8掲載)

健康の上で、節制をこころがけること、季節に合った生活を送ること、そして「こころ」の安定が非常に大切です。今回は、その中でも特に「こころ」の安定についてお話ししましょう。

「こころを安定させる」とは、感情をうまくコントロールするということです。人間は感情をもった動物であり、これをコントロールすることは、心身の健康の上で非常に大切です。漢方では、人間の「こころ」と「体」は切っても切れない心身一如という考えがあり、ある感情がたかぶってしまうと、体の不調=病気を引き起こすと考えます。

また漢方医学では、古来より「怒」「喜」「思」「悲」「恐」の感情が内臓の病気の原因になると考えています。怒り過ぎると、気が昇って「肝」を傷めてしまい、のぼせ、めまい、頭痛、胸・脇・背中の痛み、月経不順などがあらわれます。喜び過ぎると、気が緩んでしまい「心(しん)」を傷つけ、胸苦しさ、集中力の低下、不眠、不安などがみられます。思いつめると「脾」を傷め、胃の痛みや食欲不振、からだ全体あるいは手足のだるさ、下痢などがあらわれます。悲しみが過ぎると「肺」を傷つけ、息切れ、咳、喘息などの原因となります。恐れが強いと「腎」を傷つけ、足腰の冷えや痛み、排尿障害、老化の進行、不妊などがみられます。

このように感情のたかぶりは心身症を引き起こす原因となり、さらにそれにより体の抵抗力が弱ってしまい、病気にかかりやすくなったり、現在かかっている病を悪化させる原因にもなります。

自分の感情をコントロールすることは大変難しいものです。漢方薬には「こころ」安定させる働きがあります。ぜひ「こころ」と「体」の健康を目指しましょう。