医療のおはなし メディトーク

「気」の不調の漢方治療(高知新聞 医療のお話 メディトーク 2015/10/14掲載)

「気」とは、生命活動の根幹をなすエネルギー源です。いわゆる「元気」の「気」ですね。内臓の働きの促進や「血(けつ)」の流れの促進、発育、汗や尿などの排泄物の生成と量の調整、体温の維持、風邪などの病気から身体を保護するなど、生命活動を営む上で重要な役割を担っています。

「気」は目に見えないものですが、不調をきたすと様々な症状が表れます。たとえば「気」の巡りが悪くなると、抑うつ、イライラ、ため息、不眠などの精神不安定や、げっぷ、おなら、便通の異常、お腹や胸の張りなどが表れます。これを「気滞(きたい)」と言いますが、主に精神的ストレスや飲食の不摂生、運動不足などが大きな原因となることが多く、「気」が滞っている部位に疼痛(とうつう)や熱を生じる場合もあります。

また、栄養不足や長期の病気、過労が重なると、「気」が不足してしまい「気虚(ききょ)」になります。じっとしていてもじわっと汗をかいたり、動悸や息切れ、倦怠感、食欲不振、新陳代謝の低下、内臓の働きの低下、冷えなどが表れます。顔色が青白い、風邪をひきやすい、微熱が続くなどもよく見られる症状です。

他にも「気」が本来の流れと逆行してしまう「気逆(きぎゃく)」があります。これは冷たい物や熱い物の摂り過ぎ、精神不安定などから起こることが多く、イライラ、頭痛、めまい、咳や喘息などの呼吸器系の不調、吐き気、悪心、嘔吐、げっぷなどが表れます。このように「気」の不調による症状は様々ですが、漢方ではそれぞれに合わせた治療があります。

「病は気から」と言うように、「気」の不調は全身の不調に直結します。なにかとストレスの多い現代ですが、バランスのとれた食事、運動、十分な休養をこころがけ、「元気」に過ごしましょう。