医療のおはなし メディトーク

「認知症の周辺症状」と漢方治療(高知新聞 医療のお話 メディトーク 2014/10/15掲載)

歳をとるにつれて、記憶障害や見当識障害、判断力の低下など、いわゆる認知症の症状が現れる方は多くいらっしゃいます。

認知症では認知機能の低下だけではなく、抑うつ、引きこもり、不安、イライラ、興奮、攻撃性など様々な周辺症状を併せ持つ場合も多く見られます。このような周辺症状には、漢方治療を選択肢に入れてもよいでしょう。

誰しも歳をとると「肝(かん)」や「腎(じん)」が衰えてきます。それによって「心(しん)」の不調も出現します。漢方治療では、「肝」や「腎」の力を補う漢方薬や、「心」を安定させる漢方薬などを使用します。「肝」を補うことでイライラや不安を、「腎」を補うことで足腰の衰えなどの体力低下を改善します。また「心」を安定させることで、不眠や不安、抑うつ、焦燥感などの症状に働きかけます。こういった周辺症状の治療を行うことで、物忘れなどの認知機能の低下が改善することも期待できます。

横になってもなかなか寝付けない、夜何度も目が覚める、眠りが浅く寝た感じがしないなど、特に眠りについての不満を抱えている方が多くいらっしゃいますが、「若いころのように眠れない」「8時間寝ないと・・」などと焦ったりせず、「眠くなったら寝る」というふうにゆったり考えましょう。また日中は定期的に体を動かし、寝る前のアルコールやカフェインを控えることも大切です。

認知症は、ご本人はもちろん、ご家族の方にとっても大変辛い病気です。強いストレスのため、ご家族の方にも不眠や不安などの症状が現れる場合は、ご本人と一緒に漢方薬を飲んでいただくこともおすすめします。