今月の一言

6月

山田洋次監督

今月、日本東洋医学会学術総会が香川県高松市で行われ、最終日の市民講座に「男はつらいよ」シリーズの山田洋次監督の対談があったので、聴きにいってきました。座ったのは最前列。山田洋次監督は背筋もすらっと伸び、84歳とは思えないほど声にも力がありました。

そのなかで渥美清さんとの思い出を語ってくれました。渥美さんは20代で結核になり、当時はまだ抗結核薬がなく、片肺と肋骨を手術で摘出されました。当時の医師から「肋骨も切除しているので放っておいたら姿勢が曲がってしまう。俳優を続けるなら姿勢をまっすぐするよう努めるように。」とアドバイスされたそうです。寅さんの格好いい立ち姿は、努力の結晶だったんですね。また、亡くなる数年前には肝硬変がかなり進んでいたようですが、「役者はイメージが大事」と、監督にも、兄弟のように親しかった黒柳徹子さんにも病気を告げずに必死に頑張っていたのだそうです。今まで私が知らなかった裏話の数々、感慨深く拝聴しました。

「柴又」が舞台として選ばれたのは、空襲で被害を受けなかった下町で、都会である東京のなかでも寅さんの「故郷」にふさわしい場所だったからだそうです。

山田洋次監督の作品は「男はつらいよ」シリーズを10数作と、「家族」という映画を観たくらいで他の作品は観ていませんでしたが、講演を聴き終え高知に帰ってきてすぐ「小さいおうち」を観ました。あー、もっと早く観ていればよかった。劇場で観ればよかった。と、ぐいぐい引き込まれる映画でした。

山田監督、もう次の映画のことを考えておられるそうです。本当に楽しみです。