医療のおはなし メディトーク

漢方診察の特徴「舌診」〜舌を診る〜(高知新聞 医療のお話 メディトーク 6/11掲載)

「舌診(ぜっしん)」は漢方診察において、客観的な根拠となる大変重要な診察法です。例えば、暴飲暴食をした翌日に舌苔(ぜったい)(舌の苔)が厚くなっていたり、カゼをひいた時に舌の色が赤くなっていることを経験したことはありませんか。舌には、体の不調を示すサインが現れているのです。

診察時にはまず、舌の形と色を診ます。舌がボテッとして歯の痕がついている場合は、水のめぐりが悪くなっている状態を想像させます。逆に舌が痩せて薄くなっている場合は、体に必要なものが不足している状態が考えられます。これは、疲れやすい方や、大病後に見られることが多くあります。舌の色が赤い場合は、体に熱がこもった状態です。さきのカゼの例はこれに当たります。

次に舌苔ですが、舌苔が厚い場合は病が体の奥深くに入った状態、もしくは暴飲暴食で食べ物が滞った状態を示しています。逆に苔がはがれているものは、「気(き)・血(けつ)」の不足を表します。また舌苔の色ですが、白色が正常あるいは冷えを表し、黄色になると熱や病が体の奥深くに入った状態を表しています。

さらに舌の裏の静脈も診ます。紫色で非常に浮き出たものは「血」の流れが悪いことを表しています。

まだまだ書ききれませんが、このように舌診でいろんなことが見えてきます。例えば、めまいを訴える方で、舌に歯痕があれば、水のめぐりが悪いことが原因であることが強く疑われますし、腰痛の方で舌の根本の苔がはがれている場合は、五臓の「腎(じん)」の不調を疑います。

ただし舌診だけですべてがわかるということではありません。詳しい問診や、脈診、腹診のほか、不調に関係するツボを押した時の反応などを診て、総合的に診断します。